教科書に頼らない日本語の学び方・教え方


入門、初級の日本語学習者が日本語の基礎固めをするには教科書が必要だと考える方が多いと思います。

教科書を使うことも一つの方法ですが、教科書に頼らずにできる活動があります。生活や就労のための日本語は、実際に使う力が大切なので、教科書に頼っていると回り道になることがあります。教科書で日本語の知識を得れば、使えるわけではありません。知識がなくても使う練習はできます。そして、使えるようになってから知識を整理する方が効率がいい場合もあります。

CEFRのレベル別に、教科書に頼らずにできる、日本語を使うための基礎固めの方法をご紹介します。 

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A1を目指しているとき

初級教科書の内容を学習しても、運用力がA1に達していない場合があります。もしくは、教科書を使った学習がなかなか積み上がらない場合もあります。そのような場合は、まず、その学習者のペースで音と文字を学ぶ活動をします。これは、正確な発音のトレーニングするという意味ではありません。「日本語がどのような音で構成されていて、それを文字でどのように表すのか」を理解することが目的です。ここにじっくり時間をかけましょう。構成がおおよそ理解できたら、自分の名前や出身地、数字、時間、年月日など意味がはっきりわかる語彙で確認、練習しましょう。

 

活動の例

●音と文字

プロフィール

 

教材の例

●数字・時間・年月日 

 

 

A2を目指しているとき

運用力がA1に到達し、日本語の発音や文字に慣れてきたら、自分に関係のあることについて文で話す練習を始めましょう。自分に関する話題は、教室の外で使う機会があるので、そこで使うことができれば、身についていきます。文法は単文(名詞文、動詞文、形容詞文)が組み立てられれば十分です。助詞と疑問詞も使えるように練習しましょう。

練習の方法は、まずタッピングで重要な語彙の発音を確認したり、必要な語彙を導入したりすることから始めます。次にそれらの語彙を使って、学習者が自分について話す文を組み立てます。教師が文を言って繰り返して練習するより、教師がモデルを言わずに、学習者が自分で組み立ててみることが大切です。うまく組み立てられない時は、似た内容の文を読んだり、聞いたりするとヒントになります。SJ-NETの「生活を楽しむための日本語」の「友だちを作ろう」を参考にしてください。

単文が使えるようになったら、少しずつ話す内容を広げていきます。広げていく順番は、はっきりとした事実(過去の事実や見える状況など)から始めます。事実が説明できるようになったら、自分の気持ちや将来の予定など、言葉で説明しないと伝わらない内容にチャレンジします。この段階では、語彙を増やすためには、やさしい日本語で書かれた文をたくさん読み、読む力をつけることも大切です。聞く力については、日本語話者が話していることが聞き取れない場合が多いです。確認や聞き返しをする練習も大切です。さらに力をつけるためには日本語話者と雑談ができることが大切です。簡単な雑談をするために、きっかけとなる声かけの練習もしましょう。

 

●自分について話す

 ・自己紹介(名前、所属、出身など)

 ・今住んでいるところ

 ・今の仕事

 ・家族や友達

 ・好きなこと

 ・苦手なこと

●簡単な出来事や見える状況を報告する

●自分の気持ちを簡単に表現する

●予定や計画を説明する

●情報を確認する

●情報を求める

●コミュニケーションを始めるための声かけ

 

A2+を目指しているとき

単文を使って話せるようになったら、長い文を使って話せるようになる練習をします。そのためには、文を接続させるための文法が必要になります。文法事項を順に学習するのではなく、話題を提供して長いおしゃべりをしたり、いっしょに何かをする計画をたてたりすると、必然的に、理由を述べたり、仮定したりする必要が出てきます。必要なときに、文法事項や接続表現を復習したり、導入したりします。

 

●話題提供をする

 ・経験談

 ・目撃談

●協働作業をする

 ・計画を立てる